ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第3章 マドンナ・ブルー ②
男に向けて振りかぶったままの格好で彼の動きが止まる。
「暴力はダメ!!君の方が悪者になっちゃうから!」
二人とも、驚いた顔でこちらを見た。
「僕はこの通り何もされてない。だから…」
「頬っぺた、血ぃ…出てっけど?」
「こ、これは…その…」
頬につけられた赤い筋を手のひらで隠した。
「と、とにかくダメだからっ!!」
小さく舌打ちすると、彼は男の体を地面に乱暴に放り投げた。
男は、地面に這いつくばるようにしてナイフやらスマホを拾い集め、
足を縺れさせながらバタバタと暗闇へ消えていった。
「…いいのかよ?あのまんま帰しちまって?」
やり場のない怒りをぶつけるみたいに、足元の石ころを思い切り蹴り飛ばす。
「どーなっても知んねぇからな?」
「その時はその時。もしもの時は警察に相談するから。」
そう言いながら、立ち上がろうとしたけど足に力が入らなくて地面に尻餅をつく。
あんな虚勢を張っていたから…。
どうしよ?と、溜め息をついていると、
僕の体がふわりと宙に浮いた。
な、何?
「家どこ?」
僕の真上から落ちてきた声にビックリして顔をあげる。
間近に、真剣そのものの彼の顔があった。
「え?」
「…送るから。」
こ、このまま?
お姫様だっこされたまま?