
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第24章 殉愛
「あの…」
ザワめきの中の一人が、恐る恐る挙手する。
「二人とも治療中、とおっしゃっていましたが、それはどういう…」
校長先生は一つ咳払いをし、困ったように視線をさ迷わせたあと、一瞬口を噤んだ。
が、質問に答えることなく、淡々と言葉を続けた。
校長「事実関係は今、調査中です。皆さんには生徒やそのご家族、その他学校関係者やマスコミなどの問い合わせに関する注意点をお話しします。えー…」
努めて平静を装おうとする校長先生の声が、驚愕を含んだざわめきの中をすり抜けていく。
校長「…です。以上、宜しくお願いします。ここまでで何かご質問は?」
この中で一体何人の人間が校長の話に耳を傾けていたのか、
未だざわめきは続いていた。
校長「なければこれで解散とします。お疲れ様でした。」
逃げるように去って行く校長の後を追うように各々席を立つ。
そして、ついに明らかにされなかった二人目の名前を、
誰かが口にした。
「「3組の加納雅」じゃない?」と。
さっきまで、不気味にドクドクと身体中に鳴り響いていた僕の心臓が、
ドクン、と、一際大きく鳴った。
『お前と会うのもこれが最後ね?』
