
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第24章 殉愛
ここ最近、圭太と抱き合った後、お約束のように押し入れから取り出して見るようになった薔薇の絵。
あの時は白いままほったらかしてたけど、
今は鮮やかな青を乗せてその存在感を見せつけている。
青が好きだ、って、君は言ってたけど、
君が好きな青、ってどんな青なのかな?
何処までも透き通るような青空のような青?
それとも、深い海の底のような深い青なのかな?
今はまだ、花びらに青の厚紙を切り取って乗せているみたいな絵だけど、
描き進めていくうちに、絵の中から芳しい香りが漂ってきそうな絵になるだろう。
青い薔薇の花言葉は「奇跡」。
君と出会えたこと。
君と想い合えたこと。
君とこうして一緒にいること。
君に纏わること全てが、僕にとっては「奇跡」。
この「奇跡」がずっと続くようにと、筆に想いを乗せて描いてきた。
でも……。
あの、事件の話を聞いてからは押し寄せる闇のような感情に怯える。
怖い………
何が?何が怖いの?
君を失うこと?
それとも……君を絶対に失いたくないと強く願う自分?
君と僕が歩いている道は、平坦な一本道じゃない。
いや……一本道でさえないのかもしれない。
それは絶対に交わることのない二つの道で、暗くて長い隧道があって、
その隧道から抜け出た先に見える景色は、
全く別の風景なんだ…。
