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ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜

第25章 分水嶺



「そう……だけど…」



ゴニョゴニョしながら俯くと頭をポンポンされ、抱き寄せられる。



圭「もう一戦交えようか……って思ったけど、明日の仕事に差し支えるでしょ?」


「……うん。」



おやすみ、と呟くと、圭太はゆっくりと瞼を閉じた。



「……おやすみ。」



安らかな、子供のような寝顔。



ごめんね?と、その顔に呟く。



君の心を疑ってるワケじゃない。



ただでさえ終着点の見える恋。



いつ君が、僕が背中を見せるのか分からない関係に少し疲れてきたのかもしれない。



でも、今は、



男だろうが女だろうが関係ない、と言った君の言葉を信じたい……。





電車を下りてからの学校までの長い道のりをいつもより早い歩調で歩く。



まだ、朝靄煙る通学路。



あんなことがあってから、マスコミに捕まることが多くて、彼らがいてもいなくても少し早い時間に出て、しかも早足で歩くことが何となく習慣になりつつあった。



何本めかの電信柱を通り過ぎようとした時だった。



その電信柱の影から呼び止められたような気がして足を止めた。



「突然すみません、島崎千陽先生でいらっしゃいますか?」



声がした方へ振り返ると、そこには人目を忍ぶようにつばが大きめのキャスケットを目深に被る女性がいた。


「お忙しいところ申し訳ありません。私、桐原と申します。」


「きりはら…さん?」



きりはら…?うちの学校の生徒の親御さんかな?



「加納雅の……母親です。」



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