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ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜

第25章 分水嶺



「申し訳ありません。突然。」


「いえ。僕の方こそ。あまり時間がとれなくて…。」



早朝のコンビニのイートイン。



「そんなこと…本当ならちゃんと時間をとってお話しなければいけないのに……」



彼女は苦笑した。



「あの…話、って?」



誰かに聞かれてはいけない話だからこそ直接僕に接触してきたのだろう。



自然と声のトーンが低くなる。



「まずは娘がご迷惑をおかけして大変申し訳ありませんでした。」



帽子を静かに外し、彼女は頭を垂れた。



「いえ…そのことはもう。そんなことより娘さんは……?」



途端、彼女が顔を曇らせる。



「ええ。娘はもう大丈夫です。ですが…」



何か言い淀んでいる様子に、僕は思わず彼女の顔をじっと見つめてしまった。



「どうか……されましたか?」


「あの……娘の絵を…描いてくださったとか?」


「え…?は、はい。」


「ありがとうございました。。あんな綺麗に描いてくださって。」


「いえ…こちらこそ。あんな綺麗な娘さんの絵を描かせて頂いて…。それよりどこでその絵を?」



加納さん、メールか何かでお母さんに送った?



お母さん、確か、海外にいる、って……。



「絵が…直接私のところに送られてきたんです。」


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