
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第4章 君の背中には羽がある
慎「んー、ペダルもブレーキも細かいキズがついてるだけでイカれてなさそうだし…」
「………。」
俺はあの人を家まで送り届けたあと、親友で、家がバイク屋のクセに自転車が好きだ、と言って憚らない親友の家に来ていた。
慎「ライトさえ直しゃあイケるかなあ?」
慎之介は立てかけた自転車のペダルを思いっきりぐるぐる回してはブレーキレバーを握り、効き具合を確認した。
慎「んじゃ、これ、二、三日中にお前んとこ持っていくわ。」
「いや…明日には持って行ってあげたいから。」
慎「ん?何だ?急ぎか?」
「うん…。」
慎「ふーーん…?」
慎之助は意味深に笑いながら俺の顔を覗き込んできた。
「な、何だよ?」
慎「…もしかして女か?」
「まっ、まさか…?」
ものスゴい笑顔で、バシバシと背中を叩かれる。
慎「ま、ガンバれよ?」
あれから俺は、あの人を後ろに乗せたまま、適当に自転車を走らせていた。
何時間かそうしていると、気がすんだのか、家まで送ってほしい、と言ってきた。
知り合いに、自転車を趣味で弄れるヤツがいるから預からせてほしい、と言うと、
千「ありがとう。任せるよ。」
と、寂しそうに笑いながら自宅アパートの部屋の中へと消えていった。
