
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第4章 君の背中には羽がある
千陽side
僕は少し落ち込んでいた。
昨晩、暴漢に襲われた上自転車も壊れ、
彼の背中で思わず泣いてしまった。
あの自転車を大切にしていたのは確かだけど、
少し動揺していたところをもってきて、粉々になったライトを見てしまったら、
生前の伯父さんのこととかを思い出してしまって、涙がとまんなくなっちゃって…。
恥ずかしいなんて今さらじゃない?
しばらく、カウンターに突っ伏したまま自己嫌悪に陥っていると、
入り口から人が入ってくる気配がした。
慌てて顔をあげると、
圭「はい、鍵。」
「えっ?あっ?」
差し出されたものを慌てて受けとる。
圭「速攻で直してもらったから。」
店の外に目をやると、辛うじて僕の視界に収まる位置に僕の自転車があった。
「あっ…ありがと。」
圭「じゃ、確かに渡したから。」
「えっ?ま、待って!修理代は…?」
でも、いつの間にか彼の姿は店の外にあって、
僕があとを追い店の外に出た時にはもう、
通りの向こう側までを全力で駆け抜けた彼の背中が、さらに遠ざかってゆくところだった。
