ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第26章 対峙
僕は彼女が差し出したものを見て驚愕する。
凛「これ……先生ですよね?」
スマホに映っているのは
僕と……
僕によりそう加納雅。
まさか…
まさか、よりにもよって彼女がこんな画像を持っていたなんて…。
凛「所詮、先生も男だった、ってことよね?ま、こんなに綺麗な女の子にせまられたんじゃあ、無理もないわよね?」
上目で僕を見、ワイングラスを口に持っていった。
「……目的は何ですか?」
ワイングラスを傾けたままの動きで暫し止まる。
「わざわざ僕を呼び出したのは、こんなものを見せるためだけじゃないでしょう?」
そのまま、一口ワインを口の中へ流し込むと、彼女はグラスを静かに置いた。
そして、テーブルに肘をつき頬杖をついて僕を見た。
凛「……圭太と別れて。」
「………。」
凛「本当は圭太に棄てられるまで待っててあげようかとも思ったけど……」
まるで、心臓に鋭利な刃を突きつけられるような錯覚。
凛「……圭太を返してほしいの。」
「……。」
この時の僕に、彼女を見返す気力なんてなくて、ただ……
ただ、目線を下げ、彼女の言葉を黙って聞くことしかできなかった。