
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第4章 君の背中には羽がある
圭「着きましたけど…?」
「あ…うん、ありがと。」
早く降りろと言わんばかりに向けられたままの背中。
僕が自転車を降りてから程なく圭太くんも降りて、
自転車を押しながらアパートの駐輪場に止め施錠した。
圭「じゃ…。」
「あ…あの…」
圭「何?」
「もしかして…怒ってる?」
圭「何で?」
「そう見えるから…」
圭「俺はいつもこうだけど?」
じゃ、と、ズボンに両手を突っ込みながら歩き出す。
そう思えないから聞いたのに…。
「あっ…あのっ…!」
ゆっくりと足が止まって、ゆっくりこちらを振り返る。
「あっ…えっと…気をつけて帰って…?」
圭「あっ…ああ…。」
ちょっと、機嫌悪そうに見えた顔が、
僕の宙ぶらりんな言葉に、毒気を抜かれたように少し和らいだように見えた。
次の日、店の通用口を出て辺りを見回しても彼の姿はどこにもなかった。
僕にああ言われはしたけど、途中どこかで待ち伏せてたりとか、って思ったりもしたのに、
結局、何事もなくアパートに帰り着いた。
それはそれでよかったんだろうけどどこか物足りなくて、
やろうとして広げた大学の課題もそのままに僕は、ベッドにごろりと仰向けに寝転がって、そのまま夢の中に落ちていった。
