
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第5章 秘色
初めて触れる彼の肌。
頭に添えた手をそのままに、もう片方の手で滑らかな手触りを確かめる。
ぴくり、と、お腹に力が入ったと思ったら、
俺の手は、熱と艶とで彩られた彼の手によって囚われてしまった。
千「やっ……ダメ…。」
そう言われれば、逆を致したくなるのが人情で、
振りほどいて尚、その肌理を確かめるかのように撫で回す。
千「もうっ!!ダメだってば!!」
あんなに甘くて蕩けそうな時間を共有しておいて、
ダメ、って…?
しかも、あなたから誘っておきながら?
俺の胸を乱暴に押し退け、上目遣いで睨まれる。
千「圭太くん?」
「は、はい。」
千「テスト、あんまりよくなかったでしょ?」
「えっ!?」
どうしてそれを?
千「何とか赤点だけは免れたみたいだけど……」
と、俺から少し離れて距離を持ち、ため息をつく。
千「今回は嫌々ながら何とか学校も真面目に行くようになって、授業も頑張ってついていこうとしてる。」
それが何?
今のこの状況となんの関係が?
千「ね、こうしない?次回のテスト、今回の結果を上回ったら…」
そこまで言いかけて、手を口元に当てたまま、いかにも悪いこと企んでます、的な顔でニヤリと笑った。
そして、その悪だくみを俺に耳打ちした。
