
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第5章 秘色
着替えて顔洗ってと、
なんやかんやで朝飯なんて食ってる時間なんてなくて、
味噌汁ぐらい飲んでいけ、とのお袋の言葉も聞き流して家を出た。
が、後で何か腹ん中に入れてくりゃ良かった、ってことに気づいて、
例のコンビニに立ち寄ることにした。
あの人は学生だから、勤務時間は早くても午後からのはず。
だから、立ち寄ったとしてもあの人にかち合うことなんてない。
なんて、俺は勝手に思い込んでいた。
だが…
千「いらっしゃいませ。」
えっ!?
千「久しぶり。」
ほんとに。久しぶりに見る笑顔に見惚れてしまう。
…じゃ、なくて、
俺の驚いた顔を見て、彼はクスクス笑った。
千「どうしたの?幽霊でも見たみたいな顔をしちゃって?」
「いや…だって…」
千「あ、そっか。この時間に出るのは滅多とないから。」
たまにあるんだよ?と、彼は笑った。
千「それはそうと、この間はごめんね?何か、失礼なこと言っちゃったみたいで?」
「いや…俺の方こそ…」
千「ずっと気になってたんだ。もう、顔出してくれないのかな?と思って。」
