
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第5章 秘色
「え……?」
ずっと気になってた?
って、ずっと俺のことを考えてくれてた、ってこと?
…てことにはなんないか。
千「今から学校だよね?」
レジに立つあの人の後ろの時計を見て、思わず、やべっ、て口にしてしまった。
手渡される釣り銭を慌てて掴もうとして取り落とし、床にばら蒔いてしまう。
「あ…」
千「大丈夫?」
彼が慌ててレジカウンターから出てきてくれた。
「ごめん…」
千「僕の方こそ。ちゃんと渡さなかったから。」
ふと、顔を上げると、
やはり、ちょうど顔を上げた彼と至近距離で目が合った。
…『キスしていい?』
確か、昨日見た夢でこんな距離で言われたっけ?
千「これで全部、かな?」
はい、と、彼は小銭を俺の手に握らせ笑った。
千「どうしたの?顔、赤いけど…熱でもある?」
「あ……」
俺の額に当てられる、心地いいくらいの冷たい手のひらに思わずうっとりしてしまう。
はっ!こんなことしてる場合じゃ…
彼の手を振り払うかのように立ち上がり、店の外に飛び出した。
