テキストサイズ

ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜

第5章 秘色



いつもだったら、



あの人の顔を見にコンビニに行くんだけど、



今日は朝早くから出てたし恐らくはもう店にはいないだろうと思ったのと、塾に行く気がなかった俺は、



家とは反対方向の本屋で時間を潰すことにした。



慎「お前の好きな女、って、年上?年下?」



ほんと、しつこい。



慎「なあ、いいじゃねぇか。教えてくれよ?」


「………。」



このまんまだと、マジで家にまで着いてきそうだな…



「…年上。」


慎「おっ!珍しっ!!で、美人か?」


「一応…。」


慎「どんなタイプなんだ?」


「どんな、って…」



どこまで話しゃあいいんだよ?



答えに窮して、目の前を横切る和装美人を適当に指差した。



「あんな感じ、かな?」


慎「えっ?えっ?マジで?いい女じゃん?」



などと、慎之助が和装美人に気を取られている隙に本屋の外へと駆け出した。



はー、しつこかった…。



女と切れたばっかだからかな?アイツがしつこかったの、って?



乱れた息を整えながらどこで時間を潰そうかと何気にポケットに手を突っ込む。



………。



今だったら、家にいないかな?



俺はポケットの中の請求書を握りしめ歩き出した。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ