ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第6章 そして、惹かれていく。
慎「アンタが圭太の…?」
「は、はい。」
寝癖でぐちゃぐちゃの頭を掻き回しながら、そして彼もまた、彼のお父さん同様、眉をしかめながら僕を見た。
慎「あの…変なこと聞いていいっすか?」
「内容にもよりますけど…?」
慎「あの自転車、って、アンタの?」
「え?ええ、まあ…」
質問の意味が分からず、首を傾げながら頷くと、彼のお父さんがまた、彼の頭を思い切り殴り付けた。
慎「ったく…ボカスカ殴んじゃねえ、このくそ親父!!バカになったらどーすんだよ!?」
「喧しい!!お前、お客さまに向かって『アンタ』、とはなんだ!?『アンタ』とは!?」
慎「…チッ。分かったよ。」
すんません、と、小声で言いながら頭を下げた。
「あの…今の…どういう…?」
慎「あっ…いや…別に深い意味は…」
「そうですか。」
僕は上着のポケットから修理代が入った封筒を彼にそのまま手渡した。
「修理代と…自転車をピカピカに磨いてくれた分、少しですけど色をつけておきました。」
深々と頭を下げ、帰ろうとするも呼び止められる。
慎「そんなもん、いいっすよ?」
封筒から僕が余分に入れたお金を取りだし、僕の手を取り握らせた。
慎「趣味の延長でやってることだし、部品代だけで。」
と、彼は白い歯を見せ笑った。