ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第6章 そして、惹かれていく。
それ、って、余計に困るんだけど?
慎「ん?圭太じゃ不満?」
「そういうことじゃなくて…その…」
慎「男相手じゃダメなの?」
「普通はない…んじゃない?」
慎「…何だ、ダメなんだ…。」
………どういう意味?ふざけてるの?
慎「それならそれではっきり言ってやった方がいいっすよ?」
黙ってしまった僕に、慎之介くんの怒気の籠った言葉が投げ掛けられる。
駅構内にアナウンスが流れ、
慎之介くんは背を向け歩き出した。
慎「情けは人の為ならず、って言うじゃないですか?」
じゃ、と貼り付けただけの笑顔を振り撒いて、慎之介くんは走り去っていった。
「………。」
その、後ろ姿を見送りながら思う。
危ないところを助けてもらって、
自転車の修理を仲買いしてもらって、
あんな過去があった、って聞いて、
今さら邪険に出来るのか、って。
電車に乗り込み、ゆっくりと流れだす景色をぼんやり見ていた。
ぼんやりと見ながら、僕は、
今となってはもう、見ることのできなくなってしまった人の笑顔を、思い出していた。