ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第6章 そして、惹かれていく。
僕には大好きな伯父さんがいた。
東京の大学を出、銀行に就職し若くして責任ある立場を任されていた伯父さんは僕の自慢だった。
年に数回しか会えなかったけど、いろんな話をしてくれたり、勉強もみてくれたりして、会うことが楽しくて仕方なかった。
そんな中、伯父さんが東京から地元にある支店に転勤してくることになったが、
それでも、僕の住んでいるところからは電車で一時間以上も離れていて、会うことは容易ではなかった。
伯父さんも支店長に次ぐ立場ということもあって、前ほど気軽に会える時間も取れなくなって、
加えて僕もいよいよ高校受験の時期を迎え、
伯父さんに会いたい、という気持ちがなかったわけじゃないけど、
自然と疎遠になっていった。
そして、迎えた公立高校の合格発表の日。僕の元に一本の電話が入った。
『千陽、合格おめでとう。よく頑張ったな?』
伯父さんからだった。
久しぶりに聞く明るい伯父さんの声に心は躍る。
でも、同時にどこか違和感をも感じて、一抹の不安が過った。
「伯父さんね、今、入院してるのよ。」
僕の合格祝いに何か買ってやってほしい、と伯父さんから預かったお金で、僕は新しい自転車を買ってもらった。
そこで僕は、初めて伯父さんが今、体調を崩して入院しているのだ、と告げられた。