
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第6章 そして、惹かれていく。
ああ、そう言えばそうだったかも、と、
伯父さんの訃報を聞いてからの僕はろくに眠らず食事さえとらずに日々を過ごしていて、
いざ当日、遺影を前にわあわあと泣き喚いた後、軽い栄養失調と睡眠不足とで意識を無くしてしまったのだ。
「もう、悲しいよりもみんなびっくりしてたわよ。」
それはそうだ。
僕より長い間伯父さんに接してきた母さんや、お祖父ちゃんお祖母ちゃんの方が、甥っ子の僕よりずっと悲しいはずなのにあんなに泣き喚いたとなったらビックリするし、引くよ。
でも、どうしてだったんだろう?
どうしてあんなに泣けてしまったのだろう?
あの時は分からなくてすごく悩んだけど、
でも、ある一つの答えに辿り着くことができた。
僕は、
その人に恋していたのだと。
その事に気づいてからの僕は、伯父さんを喪った悲しみよりも、
そういう対象として見ていた自分が怖くて、気持ち悪くて、
卒業式も待たずに家を出たい、と両親に申し出た。
そんな僕を両親は訝ったが、どうにか二人を説き伏せ、逃げるようにして今の町へとやって来たのだ。
