ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第7章 恋という名の下心
千陽side
慌てて走り去って行く後ろ姿を僕は黙って見送った。
彼はまるで、初恋の女の子と初めてデートした時みたいに耳まで赤くし、顔を逸らし、
挙げ句、目を逸らしたままこの場を立ち去った。
その原因は、僕だ。
慎『ソッチの気があんのかどうかは分かんないけど、アイツは多分、アンタのことが好きだと思う。』
多分、じゃない。
間違いなく彼は僕のことが好きだ。
ダメならダメだ、って、はっきり言ってやれ、と彼の友人は言った。
いくら危ないところを助けてもらっていたとしても、
ご両親に強要され、自分を助けようとして亡くなったお兄さんの代わりをさせられていたとしても、
優しくするのはかえって酷だ、と。
そんなこと、彼に言われるまでもない。
圭太くん、ごめんね?
僕は君の気持ちに応えることは出来ない。
君のことを心配してくれる友だちの言う通りだと思う。
「………。」
でも、そんなこと出来るのかな?僕に?
多少大人びていると言っても、彼はまだ高校生。
あの時の僕と同じ年齢…。
でも、大丈夫。
彼はきっと分かってくれる。
きっと………。