
ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第7章 恋という名の下心
会計を済ませ店を出るや、俺は彼に頭を下げた。
「すいません、俺、何か、調子こいてあれもこれも、って。」
千「気にしなくていいから。誘ったのはこっちだし?」
と、歩き出す背中に本来の目的を思い出して呼び止める。
千「あ、そっか。忘れてた。」
じゃあ、家に来る?との言葉に、素直に後に続いた。
千「ごめんね?カフェでお茶でも出来たらよかったんだけど持ち合わせが…。」
「ごめん…なさい。」
千「気にしないで?座ってて?」
小さなケトルをコンロにかけた。
相変わらず、絵の具の匂いで一杯の部屋。
何もかもかもがコンパクトに纏められた部屋の片隅。
やはり、どうしても目がいってしまう、あれ。
「あの…」
千「ん?」
「この写真、どうして…」
あ、と、小さく叫んで、
彼は、恐らく、あの時から倒れたままであったろう、その写真立てを掴み、手近にあった引き出しに仕舞った。
千「冷めないうちにどうぞ。」
「…頂きます。」
無言でコーヒーを飲む横顔。
あの日、ライトが壊れた自転車を見て泣き出してしまった横顔を思い出す。
もう、乗れないぐらいにぐちゃぐちゃに壊れたのならいざ知らず、ライトが破損しただけだったのに…。
俺には、その答えが、
その写真の中にある気がしてならなかった。
