ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第1章 天使…時々、小悪魔?
千「び、びっくりした…。」
「何描いてんのか、と思って?」
千「ああ…。」
驚きのあまり、取り落とした絵筆を拾いながら、
千陽さんは顎で前方を指し示した。
「薔薇…?」
千「うん。何だか描きたくなっちゃって。」
無造作にバケツに放り込んだだけの、大量の白い薔薇の花。
花の色がそうさせるのか、
はたまた、その薔薇という花の姿がそう見せるのかは分からないけど、
バケツの中にあっても、花のもつ威厳は薔薇のままだった。
千「うーん、どうしようかな?」
千陽さんの絵筆を握る手が止まる。
「何が?」
千「何色にしようか、と思って?」
「色?何の?」
千「花の色。」
「え?何言ってんの?白じゃん?」
ほら、と、千陽さんの肩に顎を乗せたまま、二人で薔薇の花に視線を向ける。
千「でも、見たまま、って、何だかつまんなくない?」
「じゃ、千陽さんはどんな色がいいと思ってんの?」
千「分かんないから聞いてんのに…」
千陽さんは唇を尖らせた。
「じゃあ…青、とか?」
千「青い薔薇、ってこと?」
「うん。見たことないけどさ?」
千「青い薔薇、か…」
難しい顔をする千陽さんの頬にキスをした。