ドロップ・オブ・ロゼ 〜薔薇の涙〜
第8章 もっと、君を知りたくて。
圭太side
千「こんないいお店があったんだね?」
彼は嬉しそうに店内を見回しながらミルクティーを口に含んだ。
千「それに、美味しいし。」
…良かった。取り敢えずは満足してくれて?
「どういう意味だよ?」
慎「こういう意味なんだよ?」
慎之介は俺の手にチケットを一枚だけ握らせ、彼の目の前に差し出した。
慎「『よかったら俺と映画にでも行きませんか?』」
千「え?」
「ばっ!!ばか、お前、なに勝手に…」
と、呆れた彼に怒られる前に手を引っ込めようとしたその時だった。
千「いいの?僕なんかと一緒で?」
「は?」
慎「いいも悪いも、俺、あなたと行きたいんですっ!!」
「ばっ!!お前、また、勝手に…」
千「でも、僕、土日もバイトがあるからお休みとれるか分かんないし、店長に聞いてみてオッケーだったら連絡するよ。だから、それまで圭太くんが持っててくれる?」
チケットを持つ手を押し戻すしなやかな指先。
「あ…う…うん。」
レジカウンターに向かう客の姿に気がついて、
じゃ、と、片手をあげ彼は走り去っていった。
慎「『エエッ!いいのぉ?僕なんかと一緒で?』」
「止めろ!気色悪い。」
彼の声真似をしながら俺の背中にしがみつく悪友に毒づく。
慎「とかなんとか言って、ニヤけてんじゃん?」