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淡雪

第10章 想いを遂げる

ああ...

だからあのとき彼女を探せなかったんだ。


彼女が目が覚めて退院した頃には多分卒業してたんだろうな。


そして、彼女に僕の記憶はなかった。



僕は彼女を見つめながらそんなことをぼんやり思っていた。


「ねえ、璃子さん。

 僕がリハビリ手伝ってもいい?」


僕の言葉に彼女は少し驚いている。


「坂井くんが?

 だって仕事あるでしょ?」


僕は彼女に笑いかける


「僕を助けてくれたお礼がしたいんだ」


彼女がキョトンとした顔をした


「私が坂井くんに助けてもらったのよ」


そうか、僕を助けたことは覚えていないんだ。


「うん、それでも。

 僕はあの日からずっと君を探していたから」


そして彼女の手を握りしめた。

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