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たぶん僕は少し不機嫌な顔をしている。

「坂井くんお帰り。

　ごめんね、今ご飯にするから」

そういって気まずそうに笑う璃子さん。


小さい男でごめん。
璃子さんのせいじゃないのはわかってる。
でも仕事に復帰したら
璃子さんを欲しがる男が増えるんじゃないかって
気が気じゃないんだ。

背中からそっと璃子さんを抱き締めた。


「どうしたの？」

璃子さんが優しく聞く。

「仕事の話？」

「うん、まあ。
　そろそろ復帰しようかなぁ
　とは思ってるんだけど
　単発のドラマぐらいならやりたいなと思ってるんだけど来るのは映画か連続ドラマ
　
　なかなか思い通りにはいかないものね」

璃子さんはシチューの鍋を混ぜながら答えた。


「璃子さん、仕事したい？」

僕は璃子さんの首筋に唇を這わせながら聞く。


「そうね

　いつまでも坂井くんのお世話になるわけにもいかないし。

　ヘアメイクの仕事は好きだから」


璃子さんはくすぐったそうに肩をすぼめた。


「僕はお世話してるつもりはないよ。

　璃子さんが好きだから

　そばにいてほしいだけ」

そして首筋に吸い付いた。


「アッ...」

色っぽい声がして璃子さんの手から
レードルが落ちる。

「坂井...くん

　今は　ダメ

　ヤケドしちゃうわ...」

そういう璃子さんの声は艶っぽくて
僕を煽るだけだ。

僕はパチンとコンロの火を止めた。