淡雪
第12章 プロポーズ
「俺は臆病者だった。
みんなから失望されたくなくて
期待を裏切りたくなくて必死に練習したんだ。
だから、野球で高校に進学したときも
全国から集まってきた天才を目の当たりにして
いつか自分のメッキが剥がれるんじゃないかって恐々としてたんだ」
そして坂井くんは私を見た。
「僕に才能をくれたのは
璃子さん
あなただよ」
「私?」
坂井くんは頷く。
「あの日璃子さんを助けに行って
俺はナイフで肘を刺された。
あの時一瞬思ったんだ
これで重圧から解放されるって。
もしかしたら自由に動かなくなってしまうかもしれないけど
これを理由に辞められるって。
だけど璃子さんに押さえられた腕から
何か熱いものが注ぎ込まれた。
その時
“まだ終わらない ここからだ
まだやらなきゃいけないことがある”
って思ったんだよね。
それをはっきりと覚えてる
そのあとは気を失っちゃったから
肝心な璃子さんがどうなったかもわからなくなったんだけどさ」
坂井くんははにかんでいる。
そして坂井くんは口を閉じた。
川面から吹き上げる風はまだ少し冷たいけれど
温かな陽に照らされ火照りはじめた頬の熱を下げてくれる。
みんなから失望されたくなくて
期待を裏切りたくなくて必死に練習したんだ。
だから、野球で高校に進学したときも
全国から集まってきた天才を目の当たりにして
いつか自分のメッキが剥がれるんじゃないかって恐々としてたんだ」
そして坂井くんは私を見た。
「僕に才能をくれたのは
璃子さん
あなただよ」
「私?」
坂井くんは頷く。
「あの日璃子さんを助けに行って
俺はナイフで肘を刺された。
あの時一瞬思ったんだ
これで重圧から解放されるって。
もしかしたら自由に動かなくなってしまうかもしれないけど
これを理由に辞められるって。
だけど璃子さんに押さえられた腕から
何か熱いものが注ぎ込まれた。
その時
“まだ終わらない ここからだ
まだやらなきゃいけないことがある”
って思ったんだよね。
それをはっきりと覚えてる
そのあとは気を失っちゃったから
肝心な璃子さんがどうなったかもわからなくなったんだけどさ」
坂井くんははにかんでいる。
そして坂井くんは口を閉じた。
川面から吹き上げる風はまだ少し冷たいけれど
温かな陽に照らされ火照りはじめた頬の熱を下げてくれる。