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淡雪

第12章 プロポーズ

「坂井君...

 そこまで想ってくれてありがとう。

 でも...

 まだ私の気持ちがついていかない。

 あなたを好きなのかも分からないの。

 ごめんね」

私は顔をあげて坂井君を見た。

「ごめん...

 俺のほうこそ

 早まったと思ってる。

 思ってるけど

 このままだと璃子さんがいなくなってしまうから...」


「坂井君

 私も悪かったわ。

 あなたに誘われるまま

 あなたに甘え続けていた」

私は微笑んだ。

「ちがっ...

 すべては僕のわがままだよ。

 僕の独占欲だよ。

 璃子さんは悪くない...」

そっと坂井君の手を握る。

「すこし離れてみようか。

 私もちゃんと考える

 坂井君のこと。

 これからのこと」

「え?!」

坂井君は頭を抱えて座り込んだ。

「なんで...

 
 僕は璃子さんにプロポーズしようと思ってここへきたんだよ。

 璃子さんと出会った場所で

 僕を変えてくれた君とこれからも一緒に生きていこうって言いたかったのに...」


私もしゃがんで坂井君をあやすように頭を撫でた。

「坂井君はまだ若いわ。

 若さの勢いで人生の大事な決断をしてはダメよ」


坂井君が頭を上げる。


「子ども扱いするなよ。

 俺だって真剣に考えた結果だよ。

 俺16歳からずっと璃子さんを想って来たんだよ。

 その間も何人かの女の子と付き合ったけど
 なんかしっくりこなくて

 璃子さんを想うような気持にはならなかった。

 年齢的には若いかもしれないけど
 これほど長く想ってきたんだ。
 
 この先気持ちが変わるなんて思えない」

坂井君は睨むように私を見た。

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