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淡雪

第12章 プロポーズ

部屋に入り

坂井くんがまた私を抱き締める。


「お願い

 僕がいない間に

 いなくならないで。


 不安なんだ。


 君がいなくなったらと思うと

 とても京都なんかに行けないよ」


強く私を抱き締める。


苦しい...
坂井くんの切なく苦しい想いが私の中に入り込んでくる。


ーー大丈夫

と言ってあげられない自分がもどかしい。


「璃子さん、抱いていい?」


坂井くんの想いにつられて頷いていた。


「璃子さん...

 璃子さん...

 璃子...   」

坂井くんの切ない声が
首筋に這う...

ワンピースのジッパーをそっと下ろす音。

バサリと床に落ち

キャミソールの薄い布が体を透かせる。

「璃子さん

 綺麗...」

鎖骨に唇を落とし強く吸う

「は  んっ...   」

思わず吐息を漏らす。

「璃子さん

 僕から離れないで...」

鳴き声のような坂井くんの苦しげな囁き


胸の谷間に唇を寄せて
そこにも印をつける。

「誰にも触らせないで...

 璃子さんは

 僕のものだよ...」


顔をあげて私を見つめる。


「どこにも行かないで...」


私を強く強く抱き締める。


ーー今までこんなに誰かに愛されたことはあっただろうか。


苦しい切ない想いが溢れ

坂井くんの唇を通して私に注がれる...


誰かがいっていた。


『愛するよりも愛されるほうが幸せになれるの』


坂井くんの熱い想いに

自分の心も溶けてゆく...



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