テキストサイズ

淡雪

第13章 愛されること

「それでね...
 事務所の社長が璃子さんと話しがしたいって
 言ってるんだ」

僕は努めて平静を装った。

「そう...」

璃子さんは浮かない声だ。

「あ、でも気が乗らないならいいよ。

 無理にって訳じゃないし」

僕は璃子さんの考え込むような声に
強く言えなかった。

もし璃子さんが社長と会ってくれなければ
交際は認めてもらえない...

それでも璃子さんが嫌がるならそれでいいと思った。

しばらく黙っていた璃子さんは

「わかった。

 会ってみる」

意を決した言葉だった。

ホォッっと大きな溜め息が漏れた。

クスッと笑う璃子さんの声

「坂井くん、私が断ったらどうしようかって
 悩んだでしょ」

そうだ璃子さんには隠し事はできない。

「うん」

「大丈夫。

 坂井くんの愛を受け止めてみようって
 決めたんだから心配しないで」

なんだか力が抜けて
寄りかかっていた壁にズルズルと沈みこんでしまった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ