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淡雪

第13章 愛されること

「そりゃ残念だ」

ハハハと声に出して笑っている。

「いつもうちの若いのがお世話になってます」

男性は居ずまいを正して私に頭を下げた。

「や、やめてください。

 お世話なんてなにもしてません」

私は慌ててその言葉を遮った。

男性は顔をあげると

「賢夢も准一も俳優として仕事ができているのは
 あの初仕事のお陰だよ。

 ありがとう。
 感謝している。

 准一の時はどうなることかと少し心配したけどね
 准一は璃子ちゃんに惚れちゃったから。

 まさか、売れっ子女優とくっつけるとは
 思わなかった。

 あれは准一にとって素晴らしい売りネタにできたよ
 ありがとう」

とニヤリと笑う。

「くっつけるだなんて...」

私は小さく首を振る。

「若いのにやるもんだと、感心したんだよ」

少し皮肉のこもった笑顔で私を見つめる。

長年この業界の第一線を走ってきたこの老人にはすべてお見通しだったのだ。

私には小さく首を振ることしか出来なかった。



 

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