無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

「あれから撮影の雰囲気がガラッと変わったのを覚えている。

　ピリピリと張り詰めていた空気が和らいで
　みんなに笑顔と余裕が戻ってきたんだ。
　
　視聴率の低迷は脱却できなかったけど
　後半は明らかに評判が上がっていった。
　不思議なことに再放送の視聴率が前代未聞っていうね。話題のドラマになったよ」

田村くんは苦笑いだ。

「でもね...

　俺は助けられたけど...

　知られてしまったんだよ。
　知ってしまった
　って言うべきかな」

田村くんは唇を噛んで
次の言葉をためらった。

そしてフッと息を吐いてから

「璃子ちゃんの能力を
　
　あの場にいた人間は目撃したんだ
　彼女の驚くべき能力を」

田村くんは小さく首を上下に動かしながら
あの時を思い出しているようだった。

「見てしまったんだ...

　知ってしまったんだ...」

そして田村くんは口を閉じた。