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淡雪

第14章 リーク

なんともいえない車内の空気

「...璃子さんがパンドラの箱って

 そういうことだったんですね」

僕はポツリと言った。

「お前が羨ましいよ。

 お前は認められた」

赤信号で停まって
田村くんは僕をしっかりと見た。

「だから、

 ちゃんと守ってくれ。

 璃子ちゃんを守ってくれ

 これは俺の願いだ」

僕は田村くんの瞳を見つめて
強く頷いた。

信号が青に変わり車が動き出す。

「田村くん

 ありがとうございます。

 俺、決意できました。

 璃子さんが利用されてるって知って

 璃子さんになんて説明したらいいかわからなくなって...」

田村くんはフッと笑った。

「厄介だよな。

 璃子ちゃんは人の心が読めちゃうから
 言い訳なんて出来ないもんな」

「そうなんです。
 
 でも、田村くんのお陰で不安も揺らぎもなくなりました。

 ありがとうございました」

俺は田村くんに向かって頭を下げた。

「いいよ。

 お前が手がかかる奴ってことはいまに始まったことじゃないから」

田村くんは笑った。

「でも坂井大変だな」

「何がですか?」

俺は首をかしげた。

「浮気なんてしたら隠しようがないもんな」

そうか...

じゃないな

「大丈夫です。

 僕は浮気なんてしません。

 田村くんでも手に入れられなかった

 璃子さんをモノにしたんですから」

ちょっと嫌味だったかな

「だな」

僕の予想を反して
田村くんは優しく笑った。


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