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淡雪

第15章 策略

『確か...部活の帰りだったと思います。
 川沿いの道を歩いているとき
 女性の悲鳴が聞こえて
 急いで駆けつけると不良に囲まれている
 女子高生がいたんです。

 相手は5~6人だったと思います。
 無我夢中で助けました』

オオッというどよめきがおきる。

『じゃあ、窮地を救ったヒーローってことですか?』

『現実はそんなにかっこいいものじゃなくて...

 必死に彼女を助けようと奮闘したけど
 多勢に無勢ですからね。
 警察が駆け付けてくれたのを確認して
 最後は倒れてしまったのでどうなったのか
 わからなくなったのが現実です』

僕は恥ずかしそうに頭を掻いた。

会場から笑い声が上がり場が和む。

『それで?』

『気がついたら
 僕の肘にハンカチが巻かれていて
 ちょっと怪我を負ったものですから。
 
 彼女とはそれっきり...
 警察が来るまえに彼女はいなくなったみたいで』

『それっきり?』

『それっきり。

 だけど...

 これオフレコでお願いしますね』

中継も入っているから
オフレコになんてならないのはわかってて

『これ言ったらチームのみんなに怒られちゃうんですが...

 時効かな

 彼女のハンカチを肘に巻き付けて投げると
 負けなくなった

 最初は何となくアンダーのしたに巻いてたんです。だけど窮地にたったときそのハンカチを押さえると落ち着いて投げることが出来て

 負けることがなくなったんです』

ハンカチはなかったけど
確かに窮地に陥ったときよく肘を擦ってたのは確かなんだ。

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