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淡雪

第15章 策略

翌日のスポーツ紙の見出しも
芸能ニュースの扱いも

Jさんの筋書き通り。

【純愛を叶えた男】

として評判は上々。


「良かったね 坂井くん」

朝の芸能ニュースを一緒に見ていた璃子さんが微笑んだ。

「これで気兼ねなく
 堂々と璃子さんと歩けるね」

僕は璃子さんを抱き締めて

思いっきりキスをした。

璃子さんをソファーに押し倒して

それこそ朝から幸せを噛み締めようとした

その時

ピピピピピピ...

無粋な携帯が甘いムードを引き裂いた。


「はい」

僕は不機嫌全開で電話に出る。

璃子さんがクスクス笑っている。

「賢夢、今から事務所に来い」

マネージャーの声。

「来いって言われても
 車ないから行けませんよ。

 外は芸能記者たちがいっぱいいるし」

愛想のない声

「車がない?

 昨日、置いてったのか」

「まあ、いろいろありまして。

 だから今は無理です」

はっきり断る。

「ったく。
 迎えにいくから支度して待ってろ。

 あと、芸能記者か...
 何とかする」

そういって電話が切れた。

誰?という顔の璃子さんに

「マネージャー。
 今から迎えに来るって」

「あれ?
 そういえば、車は?」

「ん?
 昨日、田村くんに送ってもらった」

一瞬怪訝な顔をした璃子さんは
すぐに笑って

「そうだったの」

と言った。


「だから、エッチはちょっと待ってて」


「別にしたいっていってないよ」

璃子さんが笑う。


「僕がしたいに決まってるでしょ。
 世間に認めてもらったんだよ」

ちょっと熱くなる。

「だったら、いつでもできるでしょ」

そういって
チュッと唇をあてて
璃子さんは笑っている。

ーーまあ、いいか。

僕は出掛ける支度を始めた。

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