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淡雪

第16章 崩壊

静かな病院のフロア

消毒の匂い


ここへ来たのは何年ぶりだろう...


ーー璃子さん

  ここはあなたを見つけた場所


  ここは貴女が僕を思い出してくれた場所


個室の扉を開ける。


細い腕に点滴の針が痛々しい...


もう何本も打っているのだろう


肘や手首には無数の針あと



ーー胸が締め付けられる...


  僕が貴女を求めなければ


  貴女はこんなに辛い思いをしなくてすんだ...


静かに眠る璃子さんの手を取った。



ーーごめん もう苦しめないよ



僕はさんの唇にそっと唇を重ねて


ーー苦しめて ごめん


そんな想いを伝えた。


涙が溢れ

璃子さんの頬を濡らす...


ーー璃子さん ありがとう


  僕はとても幸せだった。


たった数年

忙しくて思い出なんて作れなかったけど

璃子さんがそばにいてくれただけで十分


ーー幸せだったよ


 ありがとう。



僕は璃子さんの寝顔を見つめて


そっと病室をあとにした。




  

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