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淡雪

第1章 15の春

「あれ?田辺くんメイクまだ?」


AD さんがノーメイクの僕に気付いた。


「すみません。まだ入り時間前だったので

 先に挨拶をと思いまして」


マネージャーが弁明する。


「田辺くんメイク室分かる?

 スタジオ出て左の奥の部屋」


「あ、ありがとうございます。

 行ってきます」


俺は意味もなく走り出した。

緊張しすぎて誰と何を話したのかもわからない。

スタジオを出ると大きくため息をつく。

一年分の気力を使った気がする...

こんなんで3ヶ月もやっていけるのだろうか...


壁にもたれる俺に
後ろから追い付いてきたマネージャーが苦笑いをした。
二人で真面目な顔になって見合わせて頷く

コンコン

マネージャーがノックをしてドアを開けた。


「今日から入ります 田辺准一です

 宜しくお願いします」


「はーい。おはようございます。

 鏡前座ってね」


ポニーテールの彼女が振り向いた。


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