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淡雪

第18章 結婚の波紋

医師に外出許可をもらった。

許可といっても璃子さんにとって病院はもはや自宅みたいなものだから出掛けたいときは出掛けても構わない。
具合が悪くなければしばらく戻らなくても問題はない。


僕たちは二人で区役所の窓口に向かった。

日中の区役所は多くの人が行きかう。

僕たちに気づいた人のなかにはそっと
「おめでとう」と声をかけてくれる人もいる。

「ありがとうございます」
と笑顔を振り撒きながら答える。


窓口に婚姻届を提出すると
係りの人が怪訝な目でみていた。

そうだろう。
報道ではすでに婚姻届は提出されたことになっている。


「記入漏れがあって...」

そういうと

なるほどねというように頷く。


指で記入事項を確認してから


「今度は大丈夫ですよ。

 ご苦労様でした」

そう言われて
係りの人は奥へ消えていった。


僕と璃子さんはちょっと見つめあってから
手を繋いで区役所を後にした。



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