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淡雪

第18章 結婚の波紋

「そのあとお医者様に聞いたの。

 妊娠中の恵子のこと。

 ただでさえ人の感情が読める恵子にとって
 体に別の人格を宿すということが
 どんなに危険なことか。

 出産を迎える頃には
 精神も肉体も崩壊寸前だったって...


 幸せな心とは裏腹に彼女を襲う現実。


 その姿を私も目の当たりにしたけれど

 とても見ていられるものじゃなかった...。


 その姿を彼に見せるのも嫌だったんでしょうね。

 それに彼女は知っていた

 子供を産めば自らの命を落とすことを...

 恵子のお母さんもまた恵子を産んだときに
 亡くなっているから」


「それは何となく感じていました...」


黙って話を聞いていた璃子さんが呟いた。


「育ての父に言われました。

 どうなるかは分からないが

 もし子供を宿したら

 それは宿命だと思いなさいって...」


「育ての親?」


僕は璃子さんに聞いた。


「母を長く診てくれた教授御夫妻」


「え?! 俺知らなかった。

 挨拶してない!!」


俺は焦った


例の...


【お嬢さんを僕にください】


ってやつやってない!


僕は焦った...



 

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