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淡雪

第18章 結婚の波紋

「大丈夫」

璃子さんは笑った。


心の声がだだ漏れだったみたいだ。


「いつも私を診てくれているお医者さんは

 戸籍上は “兄” なの」


「え?!」


ここに来て璃子さんの秘密が洪水のように溢れてくるんですけど...


僕と兄だけが口を開けて
状況が飲み込めずにいて...

父は初めて璃子さんに会った筈なのに
ずいぶん前から知ってるみたいだし...


「教授御夫妻は私が物心つく頃には

 すべてを話してくれていたから

 ま、普通の養子とは違うし
 
 隠しても私の力は隠せないから当然な話で...


 でもひとつだけ知らないこと


 父のことは誰も教えてくれないの。」


璃子さんは寂しそうに呟いた。


「そのことは...」


母が口を開きかけたとき


「大丈夫です。

 理由は聞いてますから。


 でも、父ですから...


 やっぱり 知りたい気持ちは...」


「そうよね。


 時が来たら...」


母がそう穏やかに言った。


「はい」


璃子さんも穏やかに答えた。


二人はわかっている話なんだね。







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