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淡雪

第18章 結婚の波紋

「二人とも覚えていないと思うけど
 璃子ちゃんが小さいときはよく遊びに来てたのよ」

母が僕と兄を見て楽しそうに微笑んだ。

「教授御夫妻が研究発表とかで海外によく行かれてたから、小さい頃は璃子ちゃんのことよく預かってたのよ」


「そうだったな。

 陵と璃子ちゃん
 いっつもくっついてて本当の兄妹みたいだったな。

 璃子ちゃん可愛くてなぁ...

 仕事で大変なことがあって帰ってきたときなんて、小さい体でギューッと抱き締めてくれて
 『だいじょうぷ』って言われたときは
 本当に心が軽くなったの覚えてるよ。

 天使みたいだって思った。

 どうしても娘が欲しくなって
 もう一人って思ったら...

 また男の子だった」


父がいかにもガッカリって顔で言うから


「すいませんでした」


と謝った。


「まさか、20年後に
 こんな形で璃子ちゃんを娘にできるとは思わなかったよ。

 あのとき生まれたのが賢夢で良かったよ」


父さんは僕に微笑み
旨そうにビールを流し込んだ。




 

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