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淡雪

第18章 結婚の波紋

「でも 仕方ないね。

 義妹としてでも戻ってきてくれて嬉しいよ。

 ずっと会いたかったんだ。


 いつも寂しそうな璃子ちゃんが

 ずっと心配だったから」


兄は優しく璃子さんに微笑む。

僕の知らない璃子さんを兄は知ってる...


その優しく包み込むような微笑み


...胸が痛くなる


「陵ちゃん

 ありがと。
 覚えててくれたんだ 嬉しい。

 陵ちゃんはずっと優しいお兄ちゃんだったから



璃子さんも微笑んだ。

「おばさま」

璃子さんは改まって母に顔を向けた。

「ごめんなさい、実はこの間坂井くんに連れてきてもらうまでこちらでの記憶を忘れていたんです。

 おばさまの話を聞いていてしばらくしてから
 私の子供の頃の記憶が少しつづ甦ってきました。

 だから、先日は失礼しました。
 あんなに大切にしていただいたのに...」

璃子さんが頭を下げると母は微笑んだ。

「大丈夫。
 恵子もね時々忘れていたから、私のこと。

 でも、大切な人は必ず思い出せるって
 彼女言ってたわ。
 
 たから、きっと思い出してくれるって信じてた。

 璃子ちゃんに思い出してもらえて嬉しいわ」

母の目には少し光るものが。

穏やかな空気に兄が言葉を発した。

「...ッタク

 やっぱり俺はお兄ちゃんか。

 ふつつかな弟を宜しくな
 璃子ちゃん」


兄さんは璃子さんに微笑んだ。


「はい」


璃子さんが答える。


「というわけで

 俺の淡い初恋が玉砕したところで
 
 明日から婚カツするか。
 意外とモテるんだぜ、俺」


誰に向かって言ってんの?


「父さん、母さん

 孫を抱かせる約束
 俺が果たしてやるから
 あと数年待ってよ」

兄さんはグラスに残ったビールを飲み干した。


「んじゃ、明日も早いし
 風呂はいって寝るわ」


そういって立ち上がり
風呂場へと消えていった。


微妙な空気だけを残して...




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