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淡雪

第18章 結婚の波紋

「ねえ、璃子ちゃんがうちに来てたのっていつくらいまで?」

姉が母に聞く

「そうねえ…

 璃子ちゃんが小学校低学年くらいまでだったかしら?

 教授が退任されてからは出張もなくなったから
 お預かりすることもなくなったものね。

 みんな学校も忙しくなって
 何となく会わなくなったわよね」

母が記憶を思い出すように言った。

「そっか。

 賢夢は幼稚園生か。
 じゃあ覚えてないよね」

「うん...

 まさかこんなに近い関係だったなんて
 知らなかったよ」

俺は素直に頷いた。


「そういえばさあ...      」


姉も母も父も
昔話に花が咲く。


璃子さんはニコニコしながらその話を聞いていて
頷いたり、話に乗ったり、驚いた顔をしたり
楽しそうだ。

璃子さんにとってはうちももうひとつの家族だったなんて知らなかったな。


でも
その璃子さんを柔らかな表情で見つめる
兄さんの様子が気になるのは...


前もどこかで見たこの表情...

あ、田村くんだ。

バーのカウンターで璃子さんを柔らかく包むような眼差しで見つめてたな。

やっぱり 田村くんも...


結婚したのに気が緩まないって...


結局俺は棚ボタみたいな結婚だから
自信なんてないよ。

璃子さんが俺を一番に想ってくれてるかなんて
怖くて聞けないし...

璃子さんを想っている男達は
俺が敵うような相手じゃないし...


ーー璃子さん、
  ずっとそばにいてね。

思わず隣の璃子さんを見つめてしまう。


 

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