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淡雪

第18章 結婚の波紋

「はい、さっさと行ってきなさい」


美咲に肩を押される。


「んだよ。

 ゆっくり酒も飲めないのか」


俺はグラスを揺らした。


「こうゆうのは早いほうがいいの。

 しっかりフラられてきなさい。

 私が胸も股も開いて慰めてあげるから」


「なんだよそれ」


俺は笑いながら美咲を見たが
美咲の目は笑っていなかった。


いい加減潮時だな。
今さら何が変わるわけじゃない。

なんで璃子は結婚しないと思い込んでいたんだろう。
いつか俺のもとに帰ってくるって思ってたんだろう...


俺はバーボンを飲み干してコトリとグラスを置くと立ち上がった。


「わかったよ

 しっかりフラれてきます」


「よれでよし」


美咲は笑ってウインクをした。

美人の部類に入る美咲はそんな仕草が妙に決まっている。

俺は背中でじゃあな、と手を振って店を出た。





「ねえ、美咲ちゃん

 とっくに彼氏と別れたことなんで陵に言わないの?」

一部始終を見ていたマスターが
俺が消えたあと美咲に声をかけていた。


「だって

 陵の心にはあの子しかいないのよ。

 昔も今も。


 陵の側にいる方法はセフレでいること。

 彼氏と別れたなんて言って陵に警戒されたくない...」


「美咲ちゃん、案外一途なんだね」


「それにね、敵は最強なのよ

 局アナの友達が田村くんに告白したんだって」


「田村って、stampの田村?」


「そう。

 そしたら
  
 『俺が好きなのは璃子だけだから』

 って言われたらしくて...


 日本中のイケメン最高峰独り占めって許せないでしょ!」


「すごいね、その子」


「だから、彼女が結婚して浮き足立ってるのは女たちなの。

 今がチャンスとばかりに攻めまくりよ」


美咲がニヤリと笑う


「女って怖いわぁ...」


その言葉を残してマスターは奥に消えた。



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