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淡雪

第19章 危険なガーディアン

俺がバーの扉を開けると
彼女はカウンターの奥の席で本を広げていた。

そう、それはいつもの彼女のスタイル。

変わってなくてちょっと嬉しかった。


そっと彼女に近づき耳元に声をかける。

「待たせたね」

ビクンと彼女が揺れる。
それもいつものしぐさ。
それが見たくて毎回同じことをしてしまう。

「田村さん...」

彼女が少し頬を赤く染めて僕を見る。

そんな顔見せられて勘違いするななんて
...無理


彼女の薬指に光る指輪。
まだ結婚指輪はしていない。
その指輪...
本当のことなんて言えないよな。


「なに飲んでるの?」

彼女のとなりに座り何気ないふりして聞く

「シャンティーガフ」

僕に微笑みながら答える。

「シャンティーガフか...

 ちょっと甘いな

 俺は...生ビールもらえる?」

バーテンに注文して彼女を見ると
髪を耳にかけ現れた顎の稜線と首筋...

こっちのほうが甘そうだ...
唇を寄せたい衝動に駆られる...。

気をまぎらわすように
目の前に置かれたビールを一気に飲み干した。







 

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