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淡雪

第19章 危険なガーディアン

...何で俺はパリにいる...

自分でも情けないと思う。
バカだと思う。
璃子は人妻なんだ。
俺を信用して託したアイツを裏切るのか...

いや、アイツもわかっているはずだ。
分かっていて俺に託した。

ちょっとくらい報酬をもらったってバチは当たらないだろ

そう思うことにした。


携帯を手に取る。
俺の顔を2度見する日本人観光客をスルーして
呼び出し音を数える。

ーー出ねぇし...

大きくため息をついて電話を切ろうとしたとき

「ごめんなさい!」

大きな声に驚いた。

「空港まで迎えにいくって言わなかったか?」

不機嫌全開で答える。

「ごめんなさい。打ち合わせが長引いちゃって」

「打ち合わせ?」

遊びに来てたんじゃないのか?

「詳しいことはあとで。
 あと10分ほどで空港に着きます。

 ああ!もう急にはいってこないでよ!」

俺は思わず笑ってしまった。

「まさか、運転してんじゃねぇよな」

「え?!してますよ」

「は? なんで」

「あと8分です。到着の出口にいてください」

ブチッっと音をたてて切られた電話...

俺は切られた携帯を見つめた。

なんでだ?

到着ロビーを出てなるべく人のいない辺りを探しスーツケースに凭れた。

遠くの方から赤いルノーがなかなかの勢いで走ってくる。

ーーあれだな

なんだか可笑しくて肩を揺らして笑っちまった。





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