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淡雪

第19章 危険なガーディアン

ホテルのロビーを走り抜けエレベーターに向かう。
ふとラウンジを見るとマネージャーと誰かと話をしている璃子が見えた。

ーーアイツ!

ツカツカとそのテーブルに歩み寄る。

最初に気付いたのはマネージャー。

「田村くん!

 終わったんですか?

 お疲れさまでした」


「ああ」

空いていたソファに腰かける。

走ってきたせいで喉がカラカラ

璃子の前にあった水に手を伸ばす。


「もらうよ」

「どうぞ」

にっこりと笑う璃子。

悔しいがその笑顔が愛しいと思う。


「田村くん、ちょうどいいところに戻ってきてくれました」


マネージャーが俺を見て言う。

ふぅーっと一息ついて隣を見れば

確かこの間撮影したCM担当の代理店の人

「挨拶もせずにすみません」

俺は隣の男性に軽く頭を下げた。

「いえ、こちらこそ
 タイミングが見えなくて...」

お互いに軽く会釈をする。


「それで?」

俺は話を促す。

「実は先日のCM  来月から始まるカンヌライオンに出品されるらしいんだ」


「ええ。
 編集をしてみたら物凄い作品に仕上がったんですが、今の日本ではセクシャルなものを芸術として認めてくれない風潮がありますからね。

 それで一考を
 カンヌに出品してから日本に逆輸入することにしました。
 日本人は海外で評価されたものに弱いですから。
 日本での予選審査は無事に通過しましてね」

代理店の人がにこやかに話をする。

「最近の主力であるデジタル処理したものも同時に出品する予定なのでどちらかでも賞を取ってくれれば日本でも大きな反響を呼ぶはずです。

 そうなれば当然放送も問題なく出来るうえに
 話題も取れる」


「なるほど」


俺は頷いた。



 


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