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淡雪

第21章 陵ちゃんの幸せ

「あ、年明けからのコレクション、璃子さんも行くでしょ?」

「うん。私は準備があるから11月にはパリに行きたいかな」

「そうか。じゃあ、今年もカウントダウンはパリかな?」

「ロンドンかも」

「そうだね。
 今年もまた璃子さんと新年を迎えられるね。
 璃子さんはそのあとウィメンズがあるからまた戻るでしょ?」

「うん。
 坂井くんは夏のオートクチュールもあるよね」

「たぶん」

俺は2年前からDio のモデルに抜擢されコレクションでランウェイを歩いている。
190センチの長身と野球で鍛えたガタイ。とはいえもともとガッチリタイプではないので、モデルとしても通用するとDio のデザイナーに惚れ込まれ...
あ!一線は越えてない。
俺はバイではない。
パリに璃子さんに会いに行く度に口説かれて。
モデルなんて俺に出来るわけがないと思ってたんだけど、田村くんがスチールに起用されたのをきっかけに
「俺もやってみる!」
ま、ほとんど負けおしみ?意地からだったんだけど。

もともとアイドルには向いていない体格。
グループでテレビに出るときは俺は3歩くらい後ろに立つか前列で中腰か...
そうしないとフレームに収まりきらないんだ。
大きいことを気にして猫背になってたんだけど
モデルの世界で俺は小さい部類。
背筋を伸ばして堂々としてなきゃ戦えない。
それは俺に自信をつけてくれた。
だからモデルを始めて水を得た魚のように面白くて仕方ない。

それにモデルを始めて嬉しいプレゼント。
コレクションの間は璃子さんと一緒にいられるってことに気が付いた。
ロンドン、ミラノ、パリ、NYそして東京。
2ヶ月近く一緒にいられるなんて、もっと早く返事すればよかったと強く後悔したよ。



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