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淡雪

第21章 陵ちゃんの幸せ

「リコー!!」

大声で私を呼ぶマッド。
ショーもフィナーレに近づきモデルたちのメイキャップも時間勝負。

「リコー!」

「はーい」

メイクの手を止めず声だけ答える。
近づいてきたマッドが

「リコ、あなたに頼みがあるの。
 メイクは他の人に頼んで」

パフを持ったままマッドに引っ張られ衣装部屋の奥へ。
そこには純白のウェディングドレス。
ウィメンズは2日後では?
衣装だけ運び込まれたのかな?
不思議そうな顔をしていると、バスローブを渡され

「服脱いで?」

なんで?

「モデルがいないのよ」

スタッフにももっと背が高くてモデルばりの女性いますけど...

「時間がないの!
 早くしなさい!」

なんかよくわからないけど怒られる
仕方がないから服を脱いでバスローブを着る。
簡易的に設置された鏡前に座ると、さっきまで一緒にモデルのヘアメイクをしていたヘアアーティストのトムがやって来て

「リコ、サイコーのハナヨメに仕上げてあげるわ」
と鏡越しにニヤリと笑って私の髪を巻き始めた。

「なにが始まるの?」

「ウェディングよ」

そう言ってウインクするけど...
そんなの聞いてないし。

まあ、マッドのことだからまた突然思い付いて演出を変えたんだろうなぁ。
たまにあるんだよねこんなことも。
東京だから日本人の私を選んだのかもしれない。
色々考えていると

「出来たわよ」

トムが満面の笑みで私を見つめる。
トムのことだから奇抜な感じになるんだろうと覚悟していたが意外にも清楚な感じ...
鏡の向こうの自分にちょっとびっくり

「リコは美人だからやりがいあるわ」

そう言って笑うと

「さ、早く着替えて」

ビスチェでボディラインを矯正されて
スタンドライトの骨組みのようなパニエを履いたら...
衣装部屋の扉から出られない...

「あ...やっぱり大きかったかしら
 ドレスは袖で着るしかないわね」

いつの間に現れたのか牧師スタイルのマッドがいる。一度パニエを脱ぎ下着姿で廊下へ出る。裸を見慣れているモデルも私の下着姿には驚いたらしい。

廊下でもう一度パニエを履き、ステージ袖でマリーアントワネットのようなスカートの大きなドレスを着る。重量のあるアクセサリーをつけ、ベールを被り準備万端。




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