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淡雪

第5章 槇 璃子

「昼休憩入りまーす!」

助監督さんの声がスタジオに響く。


俳優、スタッフがスタジオから出ていく。


渡部 拳はセットの中で項垂れていた。


「拳さん、食事しませんか?」

私は声をかけた。

渡部拳とは以前も仕事しているので話しやすい。

顔をあげた渡部拳は

「あ、槇ちゃんか...

 情けないとこ見られちゃったな...」


「そんなことないです。ご飯行きます?

 それともここでいいですか?」


渡部拳は私の言葉に

「君のメイク室で食事をとってもいいか?」


と答えた。


「わかりました。お弁当をとってきますので先に部屋に行っていてください」


と笑顔を向ける。


「ありがとう。 悪いね」


拳さんは力なく立ち上がり歩き出した。

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