テキストサイズ

淡雪

第5章 槇 璃子

拳さんは1年前交通事故で息子さんを失っていた。
事故に遭う直前、親子喧嘩をして息子さんは家を飛び出し、数時間後帰らぬ人となった。


拳さんがNGをだし続けたシーンは息子と怒鳴りあう場面。

拳さんは言葉に詰まって台詞が出てこなかった。


「それで、アイツはなんて言ってるんだ?」


「私が言いますか?

 直接会話されますか?」


拳さんは目を見開いた。


「アイツと話せるのか?」


私の体を激しく揺り動かす。


「はい。お望みなら」


「頼むよ!頼む。

 伝えたかったこといっぱいあるんだ」


私は頷いた。


「どうぞ。私の手を握ってください。

 そして息子さんの名前を呼んでください

 息子さんが答えてくれたらそのあとは二人で会話ができます。

 その会話は私にはわかりませんから

 どんなことを話していただいても構いません」


「本当か?アイツと話せるのか?

 槇ちゃん、ありがとう」


私は頷き拳さんの手を取り目を閉じた。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ