テキストサイズ

淡雪

第6章 坂井 賢夢

「どういう意味ですか?」


「彼女といると心地いいだろう。

 心が安らぐだろ?」


「はい」


「彼女は人の気持ちがわかる人間なんだ。

 わかるというより人に触れると相手の気持ちがすべて彼女に流れ込んでしまうんだ。

 流れたもののなかで相手が望む感情だけを戻し、負の感情が彼女に残る。

 それに耐えきれなくなったとき彼女は眠りにつき、浄化する」


「感情が読める、ということですか?」


「まあ、そんなもんだ」


いまひとつよく分からないが何となくわかる気がする。


「だから、彼女を利用するのはやめてくれ」


医師は冷たい瞳を向けた。


「利用だなんて...」


「君みたいなヤツが一番厄介なんだ。

 彼女のためといいつつ

 案外自分のことしか考えてない。

 詐欺師の方がまだいいさ

 自分は悪人だと認識しているからな」


言われている意味がわからない...


この彼女を好きという気持ちは嘘だとでもいうのか?


「まだ時間はある。冷静に考えてくれ


 どんな彼女でも愛せる覚悟がないのなら

 彼女が寝ている間に消えてくれ」


医師の言葉とは思えない辛辣なものだった


ストーリーメニュー

TOPTOPへ