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淡雪

第6章 坂井 賢夢

その事件は婦女暴行未遂と傷害事件として処理され四高の奴らは少年鑑別所へ送致された。

彼女が誰なのか結局わからなかった。

警察も学校や近所に聞き込みにあたったがなぜか彼女は見つからなかった。



俺は...


以前よりも球速が早くなり1年生でレギュラーを取ることができた。


あれ以来肘はまったく違う感覚になった。


戸惑いはあったが俺が活躍することで彼女が俺の存在に気付いてくれればいいと以前にまして強く甲子園出場を願って必死で練習を重ねた。


俺は1年から3年まで甲子園に出場した。高校生にとって甲子園出場とは特別なものでピッチャーだった俺は地元に帰ると物凄い有名人になっていた。

3年の秋にはプロ野球からのオファーも来ていた。


子供の頃はプロ野球選手になりたいと夢見ていたが...

いつの間にか俺の野球は子供の頃からの夢よりも、俺を救ってくれた彼女に会うための手段となり、いつか彼女が会いに来てくれるのではないかという淡い期待を胸に頑張り続けたが...

彼女が会いに来てくれることは 

なかった。


俺は高校の3年間で野球をやり尽くしてしまった気がしてそれ以上続ける気になれず
結局プロの道は断った。

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